データベース『えひめの記憶』

えひめの記憶 キーワード検索

瀬戸内の島々の生活文化(平成3年度)

(2)関前村水利

 「明治から大正期にかけて、ここ小大下(こおおげ)島は石灰岩の採掘で大変にぎわっていました。日本セメントや大阪窯業などの大手企業と個人事業所を含めて10数社の事業所が、周囲4kmほどのこの小さな島にひしめきあうように営業していたのです。往時を知る人によると、島のあちこちからハッパの音がとどろき、島のにぎわいも今では想像のつかない程であったといいます。」関前村役場で水道係をされている**さん(30歳)の話は続く。「しかし、昭和に入り、太平洋戦争ごろからコスト的に経営困難になったことや労働者の老齢化などにより、大手企業が撤退を始めると、他の事業所も規模を縮小せざるを得なくなりました。ついに、昭和40年代中ごろ、すべてのヤマが閉山・休業に至ったのです。
 それから数年後、その跡地の一つカネゲン採掘場跡が、湧水や雨水によって、なんと10万tの水量を有する湖沼と化しました。それまではこの島も離島の宿命ともいえる慢陸的な水不足に困っておりましたが、この天恵ともいうべき水源を得ましたので、昭和49年度より3か年計画で総工費1億8千万円をもって、関前村簡易水道増補改良工事を行いました。そして、昭和52年1月1日より、この新施設による給水を開始したのです。
 岡村島には、小大下島から海底送水管によって水を送り、現在では村全体の約7割をこの小大下水源池から供給しています。
 昭和58年から59年には異常気象で渇水し、水が塩分を含んだこともありましたがその後回復して、今では満々と水を湛えているこの小大下水源池は、村民にとってかけがえのないライフラインの源となったのです。
 なお、小大下島にはこのような石灰岩採掘跡地がほかにも数か所あり、その中には、予備の水源池として利用しているもの、クルマエビの養殖場として利用しているものなどがあるのです。」と。
 「蝶の島」としても有名な関前村では、珍蝶クロツバメシジミの繁殖に力を入れている。ロサンゼルスからパトリック・ウェルズ博士(オキシデンタル大学名誉教授、65歳)が訪島(平成3年11月)されたほか、多くの専門家が訪れている。台風19号の影響で、クロツバメシジミの食草ツメレンゲが絶滅に頻したが、「チョウのしま」を育てる会(船越清忠会長)では万全の策を講じている。瀬戸内海の宝の一つとなろう。