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瀬戸内の島々の生活文化(平成3年度)

(2)渡海船の活動-運航と営業の特色

 今日における渡海船の運航と経営上の基本的な特色は、次のとおりである。
 まず、渡海船とはどのような船であろうか。その特色を個条的に上げるが、あくまで基本的・一般的な渡海船の姿であり、地域や船主によって相違があることをあらかじめ断っておきたい。また基本的な業務・経営内容については表3-4-4にまとめた。

 ① 船舶としては約20トン未満の小型動力木造船が多く、乗組員は夫婦2人か親子2人、または親子夫婦3人で運航する
  ケースが多い。
 ② 地域的には、芸予諸島と今治港又は尾道港、忽那諸島と三津浜港など島々と都市部の港を結ぶ小型定期船(旅客と荷物両
  用又は貨物専用)で、一日一往復か週数回の運航である(日曜、祝日は休業する場合が多い。)。
 ③ 往きは地元の業者や個人から発送を依頼された荷物を積んで運送し、帰りは地元から注文依頼された商品や荷物を積んで
  帰港し、各事業所・商店・個人に配達する(島の桟橋や岸壁で依頼者に直接渡す場合もある。)。
 ④ 地元の各業者・商店と都市部の卸問屋との仲介的役割を果たしている。
 ⑤ 取り扱う商品は、生鮮食料品を始め、日用雑貨文具類、電気製品、肥料、薬剤、衣料、建築資材、加工用資材、農産物な
  ど多種多様、広範囲である。
 ⑥ 薬局に薬の受け取りを依頼されるなど小口の生活必須的な仕事も引き受けている。
 ⑦ フェリーや高速艇より運賃や荷物の運送費が安価である。
 ⑧ 地元の農協や事業所から農産物や肥料などの各種生産品・資材を定期的に委託運航する渡海船もある。
 ⑨ 大手運送会社と直接契約として下請け配達をしている渡海船もある。

 以上のように渡海船の活動は、島々の人たちの日常生活に密着するとともに地場産業と直結しており、文字どおり「島の便利屋さん」として地域に大きな役割を果たしている。島に生き島と共に歩んでいる渡海船主のうち、越智郡伯方町有津(あろうず)、宮窪町友浦(ともうら)、温泉郡中島町野忽那の渡海船主3人の方々にお会いして、話された事柄を中心に地域に生きている姿を紹介する。

表3-4-4 今治入港の渡海船と運搬状況(平成3年1月~12月)

表3-4-4 今治入港の渡海船と運搬状況(平成3年1月~12月)

(注)今治市港湾局資料より作成。豊田丸は同年6月で運航中止(数字は6月まで)。