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瀬戸内の島々の生活文化(平成3年度)

(4)今日の内航海運の現状と課題

 平成3年度の運輸白書によれば、内航海運は国内輸送物資の約44.7% (トンキロベース(*1))を占め、依然としてわが国の基幹的な輸送機関の役割を果たしている。自動車輸送の拡大によって、昭和50年度の51%よりシェア・ダウンしているものの、石油・鉄鋼・セメントなどわが国産業の基幹物資の約80~90%を輸送している実績と役割は極めて大きいものがある。なお愛媛県の内航貨物船の積荷は、貨物船とタンカーはほぼ半々の割合であり、貨物部門では(年によって若干の変動はあるものの)鉄鋼、砂利・石材、雑貨、紙・パルプ等が中心である。
 内航海運の輸送量は、昭和55年3月の第2次オイルショック以降、長い間低迷していたが、昭和62年後半から内需拡大を中心とした景気が上昇し、鉄鋼・造船など重工業の復活と公共事業の拡大によって内航海運の活況の時代を迎えている。その中で、海運王国といわれる愛媛県の役割は大きく、平成3年4月における内航船腹量の全国シェアは貨物船が9.3%、タンカーが20.8%を占めており、愛媛船主による愛媛海運の動向は戦後一貫して注目されるところである。
 愛媛県の海運業者の特色は、船舶貸渡業者(オーナーという。)(*2)が87.9%を占め、その内74.4%が1隻の船を所有するいわゆる「一杯船主」が占めることである。しかし、今日、経営規模が小さく個人船主である一杯船主は漸次減少傾向にあり、10年前と比較して半減してきている状況である。その要因としては、①内航船員の不足、②若手船員の不足による船員の高齢化、③後継者難、④人件費・金利・修繕費等のコスト上昇、⑤船舶老齢化による代替え船の建造資金難など運航と経営上の諸問題があげられる。特に、①については、船員の給料、勤務時間と休日の確保、それに伴う予備船員の配乗、船内の居住環境の改善、船員の安全管理などいわゆる3Kを含んだ厳しい諸課題が山積みしており、一杯船主の大変な悩みとなっている。なかんずく199G/T(*3)クラスの小型船舶を運航している一杯船主の悩みは大きいのが実情である。


*1 輸送トンキロは輸送活動量を示す(輸送トン数×輸送距離)。
*2 船舶(乗組員を含む)を所有し、それを運航業者(オペレーター)に貸渡しして用船料を受け取る業者、船主。
*3 G/Tは船舶の総トン数で、船舶の大きさをその容積率によって表す。