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瀬戸内の島々の生活文化(平成3年度)

(3)燧灘と伊予灘の漁業

 愛媛県の海岸線は、1,330kmで全国第4位である。全国有数の漁業県である(⑨)。漁業海区は太平洋南区と瀬戸内海区に二大別され、瀬戸内海区はさらに、燧灘(備後・芸予瀬戸を含む。)と伊予灘(安芸灘を含む。)に分けられる。
 漁業海区別・部門別生産額の太平洋南区(宇和海)と瀬戸内海区(燧灘と伊予灘)との構成比は、太平洋南区72%、瀬戸内海区28%である。
 部門別生産額では、太平洋南区と瀬戸内海区では大きな対照を見せている。すなわち、太平洋南区の宇和海は入り江の深いリアス式海岸で、多くの岬と湾をもち、太平洋からの黒潮の流入がある。古くから宇和海はイワシの好漁場として一大イワシ網漁業地域であった。昭和30年代のイワシ網漁業の不振と呼応するように、昭和34年に三重県の養殖業者が宇和海に進出してから、養殖業が飛躍的に発展してきた。全体として太平洋南区の生産額72%のうち、55%が養殖業からの水揚げである。それに比べ、瀬戸内海区28%のうち養殖業は4%に過ぎない。しかし、「灘」と「瀬戸」の漁業環境は多種多様な漁業を発展させた。
 専兼業別個人経営体を、昭和38年調査の第3次漁業センサスと、昭和63年調べの第8次漁業センサスとを比較して見ると、その25年間に大きく変動してきた島の姿を見ることができる。個人経営体は全体として、増加率はマイナス傾向にあるが、経営体が増加した島として、燧灘では、岩城村、伯方町、上浦町、大三島町であり、伊予灘では中島町中島である。反対に減少している島としては、燧灘では新居浜市大島、魚島村、生名村、関前村、北条市安居島、伊予灘では中島町津和地、長浜町青島である。
 専業別の構成比で専業率の高くなった島は、新居浜市大島、魚島村、弓削町、宮窪町、北条市安居島、中島町野忽那島、中島町津和地島、長浜町青島である。兼業のうち、他からの収入を主体とし、漁業からの収入を従とする第2種兼業漁家が多い島は、弓削町、生名村、岩城村、上浦町、大三島町、吉海町渦浦、中島町中島、中島町睦月島、中島町神浦、中島町二神島である(図3-2-4、3-2-5参照)。
 個人経営体の増加した島は、ノリ養殖の発展が増加を促進した要因と考えることができる。一方、減少の著しい島は、離島性の強い島ほど顕著である。専業率の高い島では、漁業の生産手段である漁船や漁具の効率化に努力している漁村と、反対に個人経営体のうち後継者のいない、高齢化の著しい漁村の二つのタイプに分けられる。
 漁船について見ると、第3次センサスと第8次センサスとの25年間に、大きく変化している。それを類型化すると、(1)無動力船から動力船への転換、(2)無動力船から船外機付船への転換、(3)動力船から船外機付船への転換の三つのタイプに分けられる。(1)タイプは新居浜市大島、宮窪町、吉海町渦浦、北条市安居島、中島町野忽那、中島町元怒和、長浜町青島である。(2)のタイプは船外機付船で、ノリ養殖をはじめとする養殖業が盛んな漁村である、(3)タイプとしては魚島村、吉海町津倉、中島町二神島に顕著である。瀬戸内海区の漁船総隻数は6,098隻である。うち無動力船は125隻で2.0%、船外機付船は1,098隻で18%、動力船は4,875隻で80%である(図3-2-6、図3-2-7参照)。
 馬力数について見ると、芸予諸島(北条市安居島を含む。)の平均馬力は26.04ps 、防予諸島(長浜町青島を含む。)は30.29ps で、燧灘の島より伊予灘の島の方が大きい。
 漁業種類別構成は、瀬戸内海の場合、海面漁業92.6%、海面養殖7.4%であり、太平洋南区の海面漁業41.2%、海面養殖58.8%と著しく対照的である。
 漁業種類別漁獲量について、瀬戸内海区の伊予灘と燧灘を比較してみると、両海域とも小型底引き網漁業が伊予灘32%、燧灘40%と第1位を占めている。あぐり網漁業は伊予灘18%であるが、燧灘には見られない。第2位は船引き網・ぱっち網漁業は32%、伊予灘16%で、伊予灘のあぐり網漁業18%を加えると、燧灘の32%に対応する。第3位は釣り・はえ縄漁業で伊予灘14%、燧灘6%で、漁業種類別構成比の瀬戸内海区の32.1%に比べ生産量では低くなっている。

図3-2-4 専兼業別個人経営体数と構成比

図3-2-4 専兼業別個人経営体数と構成比

「第3次漁業センサス」昭和38年11月1日調査より作成。

図3-2-5 専兼業別個人経営体数と構成比

図3-2-5 専兼業別個人経営体数と構成比

「第8次漁業センサス」昭和63年11月1日調査より作成。

図3-2-6 種類別漁船隻数と構成比

図3-2-6 種類別漁船隻数と構成比

「第3次漁業センサス」昭和38年11月1日調査より作成。

図3-2-7 種類別漁船隻数と構成比

図3-2-7 種類別漁船隻数と構成比

「第8次漁業センサス」昭和63年11月1日調査より作成。