学び舎えひめ<you遊コラム>

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■ とかげ座 ~ 暗やみにひそむ暗い星座

八月二十三日は二十四節気の一つ、処暑です。暑さを処分する、というその言葉の通り、この時期になると、昼間は残暑が厳しくても、朝夕はめっきりと涼しくなってきます。真夏のつもりで窓を開けたまま寝てしまい、風邪を引いたという経験をお持ちの方も少なくないはずです。生き物たちは人間よりも季節の変化にもっと敏感です。あれほどたくさんいたはずのへびやとかげも、いつの間にか昼の暑い盛りにしか姿を見せなくなっています。さびしいなと思われたら(そんな人はいない?)夜空に彼らの姿を探してみましょう。は虫類を描いた星座は意外に多く、へび座、うみへび座、みずへび座、カメレオン座などがあります。今回ご紹介するとかげ座もその一つです。
 とかげ座は、夏の代表的な星座の一つであるはくちょう座と、秋の星座として有名なペガスス座、ケフェウス座に囲まれたあたりにあります。これから十月までが一番の観察のチャンスです。でも一番明るい星が四等星ですから、見つけるには、良く晴れた月明かりのない空が必要です。はくちょう座のデネブ(夏の大三角の一つ)とカシオペヤ座のWの中で一番明るい星(左から二番目の星)の真中あたりに目をこらすと、数個の暗い星たちがジグザグに並んでいるのが見つかります。このあたりがとかげ座になりますが、星を結んでその姿を思い描くには、かなりの想像力が必要でしょう。
 この星座を設定したのは、ポーランドの天文学者ヨハネス・ヘベリウスで、十七世紀末のことです。当時すでに目立つ星々はいずれかの星座に所属していましたが、まだその境界があいまいだったため、星座の「空白地帯」が点在していました。彼はその一つに新しい星座を作ったのです。このため、歴史の長い他の星座と違って、星に名前はついていませんし、この星座にまつわる神話もありません。それにしても、他にもっと美しいものはたくさんあるのに、なぜとかげだったのでしょう?まさか秋を迎えてとかげの姿が見られなくなったのをさびしく思ったから、ではないですよね、ヘベリウスさん?
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