生涯学習愛媛 bR4(平成8年8月発行)
私の思うこと【講師紹介】

最大の楽しみ
    愛媛県生涯学習推進講師
井上 佳子
指導分野●演劇史(西洋・日本)
        演出論
        演技論
        劇作方論
住   所●松山市
現   職●劇団イリュージョン主宰
        松山市生涯学習講師
       

 「芸術は人を癒すことができる」と大江健三郎さんはノーベル賞受賞式の時に言われましたが、私もそう思ってきました。
 そして、演劇は心を癒し、高揚させ、啓発し、時には警告をもする具体的かつ直接的な芸術であると思います。
 人間の歴史はじまって以来、何かを演じることは、祭礼や儀式の中で行われ、芸能となって伝承されてきました。
 人間の生と死、神、愛、戦争、病気など、人間の生まれてから死ぬまでのあらゆる出来事を物語り、演じてきました。
 さて、20世紀もいよいよ世紀末のカウントダウンに入り、人間の今までの歴史の中で遭遇したこともないような行き詰まりを感じています。地球の未来を危うくしている環境問題、人の心の荒廃、食糧問題など、ありとあらゆる問題が生じ、何一つとして明るい未来への見通しはありません。
 そんな中で、今こそ、学習が必要なのだと思います。それも、民族のためではなく、グローバルな視点に立っての平和・共存ということを学習しなくてはいけない時だと思います。
 私も自作の劇を公演するとき、常にそのことを念頭におき、小さな公演にすぎませんが舞台を観た方が問題意識を持ったり、勇気を持ったり、元気づけられたり、少しでも心を豊かにしていただくことを大切にしています。
 
 学習という言葉は、いささか堅くて教育的ですが、本当は楽しいことです。学習の最大の目的は、未来を希望の持てる世界にすること、生まれてくる子供たちが明るい夢を見られる時代を作ることですから、これ以上の楽しさはありません。
 音楽も美術も演劇、文学も人に感動してもらうためには学習が必要です。
 人は何のために生きるのかと考える時、過去に不幸に死んだ人たちの涙を背負って、幸せな未来を招くべく努力すること、そのために学び、そして行動に移し、表現して行くことだと思います。
 私にとりましても、学ぶことこそ最大の楽しみです。

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